皆様、こんにちは。
フィリピンのビジネス情報についてブログを執筆させて頂いている池田葵と申します。
本日は、ザックリとフィリピンビジネスまとめということで、本当にザックリとフィリピンのビジネスについて私の実体験からのアドバイスを記事にしたいと思います。
また、記事は私のビジネス実体験をベースに書いています。なので、私がまだ経験したことない情報については補足を付け加えています。
ジェネラルな情報はインターネットですでに優しい方が色々書いてくれていますし、正直、フィリピンの場合、現実と規定が乖離している場合があるので、私はあくまで自分の経験したことしかお伝えできないのです。
あとは、思ったよりも長くなってしまったので、記事をいくつかに分けたいと思います。
更新は遅くなってしまうかもしれませんが、何卒よろしくお願い致します。
最初に
私の記事は主に「フィリピンでビジネスをスタートしたい」オーナーになりたい方向けの記事です。
なので、
⇒「フィリピンの会社で働きたい」という方は私の記事を見るよりもご自身の専門スキルの勉強と、英語の勉強をオススメします。
⇒「ビジネスオーナーになりたい」という方はこの記事が参考になれば幸いです。
しかし、ビジネスオーナーになりたい方も、すべてを知る必要はありません。
なぜなら、そのためにマネージャーなどのプロフェッショナルを採用するのですから、あなたがすべてを知っておく必要はないのです。
しかし、ある程度の知識を全体的に持っていないと、マネージャーの提案に対して決定を下したり、あとは、リスクヘッジができませんので、この記事ではザックリと知っておいた方が良い知識のみをまとめてみます。
また、細かいことはそれぞれのトピックで詳しく掘り下げますし、正直、Covid-19以降、色々なものが目まぐるしく変化しているので、この記事の内容もいつ古くなるか分かりません。
なので、私のまさに「今のフィリピンで皆様の役に立つと思う情報」を羅列させて頂きます。
※私は各部署のマネージャー、顧問弁護士、会計事務所から常に情報をアップデートしていますが、必ずしも「すべて間違えていない」とは言い切れないので、具体的にビジネスをスタートされる際には専門家にご相談ください。
フィリピンでビジネスをする時に心がけておくこと
あなたは外国人です
「知ってるよ」と言いたくなりますが、あなたはフィリピンでは外国人であり、いつまで経っても外国人なのです。
幸いにも日本人に対して世界的にも友好的な方は多いです。
しかし、ビジネスはまた違うと思います。
「うまくいっている時」はいいのですが、何かあった時に外国人だからということで、コロッと態度が変わる人もいます。
私も重大な違反があったフィリピン人を解雇した時に「アンチ・フィリピーノ」、つまりフィリピン人を侮辱したということでイミグレーションに訴えられた経験もあります。
しかし、ちゃんとメールや、メモランダムなどの証拠を持っていたために、訴えは却下されました。
・何かあった時にはレターやメモランダムなど、文書として証拠を残しておきましょう
英語の知ったかぶりはやめましょう
前回の記事でもお伝えしましたが、
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
です。
これは、結構日本人の方がやりがちなことですが、自分が十分な英語スキルを持っていない時は決して「分かったフリ」だけはやめましょう。
英語は勉強してスキルアップしなければなりません。
しかし、それには時間がかかるともお伝えしたはずです。
私はフィリピンに来て6年目ですが、最初は全く英語が話せませんでした。
今は会議を英語でリードできるレベルにはなりましたが、例えばビジネスプランは分からない英語が出てくる時があるので翻訳ツールで意味を理解していますし、契約書などは分からない単語があれば翻訳ツールで翻訳して理解しますし、英語ができる人にちゃんと確認してもらっています。
英語の勉強方法についてはコメアオさんも言われている通り、自分で勉強して話すしかありません。
私はフィリピンに来てから「一億人の英文法」という本を何回も読みました。
あとは、オフィスでとりあえず英語を話していました。「とにかく話す」これが最も伸びると思います。
そのおかげで、今、特に英語で困ることはなくなりました。
しかし、やはり発音が悪いので、初対面の日本人英語の発音に慣れていない人には、伝わらないことがあるので、ネイティブにはまだまだレベルが足りていません。
ご自身が英語ができない場合は、通訳を必ず採用しましょう。
フィリピンには日本語能力試験(JLPT)と呼ばれる資格が存在します。
これは、フィリピン人の方の日本語能力テストなのですが、以下のような区分になっています。
レベル | 「読む」「聞く」という言語行動 | |
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる | 現実の生活の幅広い場面での日本語の理解(上級レベル) |
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる | |
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる | N1~N2(上級レベル)とN4~N5(初級~基本レベル)の中間となるレベル |
N4 | 基本的な日本語を理解することができる | 教室内での基本的な日本語の理解(初級~基本レベル) |
N5 | 基本的な日本語をある程度理解することができる |
レベルはN1が一番高く、5段階です。私のオフィスにはN1のフィリピン人はいませんが、以前、採用を考えた時に平均給与をリサーチしたのですが、100,000ペソ(約20万円)ほどでした。
英語と日本語を読み書きできる優秀な人材であれば、私は最高のコストパフォーマンスだと思います。
また、N1に合格するには凄まじい努力が必要です。その時点で、勉強熱心な優秀な人材である可能性も高いですね。
・英語の文書は必ず翻訳して、理解しましょう
・英語が分からないうちはビジネスのやり取りはメールで行い、必ず翻訳して理解しましょう
・英語のできる通訳を採用しましょう
英語ができない人は上記を守って欲しいです。「恥ずかしい」から知ったかぶりをしたら絶対に痛い目に遭います。
ちゃんと「詳細についてはメールで説明してください」「資料をメールで送ってください」「質問はメールで送ります」と言えるようになりましょう。
日本でのあなたのビジネススキルや経験が、英語ができないだけでパフォーマンスが著しく低下するのは悔しいと思いますが、それが今のあなたの実力なのです。
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
英語がビジネスレベルになるまではそれを恥ずかしくないと思い、でも、毎日コツコツ英語を勉強できる方なら、フィリピンでもビジネスができると思います。
偉そうに言っている私もまだまだのレベルです。TOEICは受けたことないのですが、おそらくひどい点数になると思います(笑)
フィリピンでの法人設立
こちらは、フィリピンで新規ビジネスをスタートされる方を想定しています。
もし、日本に法人があり、ブランチ(支店)の設立などを考えている方は、日本法人の状況によっても変わってくるので、弁護士に相談してください。
また、フィリピンには経済特区(PEZA)があり、日本の大企業などは通称PEZA企業と呼ばれるフィリピン拠点があります。
ここでは、PEZA企業以外のいわゆる一般的な法人設立について書いています。
また、法人設立も現地法人、支店、駐在員事務所などがありますが、今回は現地法人について書いています。
また、本来であれば法人設立の前に、マーケットリサーチ(市場調査)と、ビジネスプラン(事業計画)、ファイナンシャルフォーカス(財務予測)などを作成し、「行ける!」と判断してからビジネスはスタートするものです。
しかし、上記を行うにもある程度の情報は必要だと思うので、少しでも参考になれば幸いです。
ここからは法人設立のプロセスと、それぞれについて私の体験からの所感を書きたいと思います。
フィリピンの法人設立は誰に依頼すればいいの?
法人を設立する場合は最低資本金を預け入れる必要がありますが、フィリピンは希望する事業内容や外国人持株比率によって資本金が異なります。
なので、まずはフィリピンで法人を設立する場合は、誰かに頼みましょう。
私の場合は、弁護士事務所に依頼した経験と、自社の会計チームに法人設立の経験がある優秀なマネージャーがいるので、彼女に依頼した経験があります。
絶対にやめて欲しいのが、紹介された訳の分からないフィリピン人にだけは依頼しないことをオススメします。
最初はフィリピンにも日本人のいる会計事務や弁護士事務所があるので、そちらに依頼するのが一番良いと思います。
費用については事業所によると思いますが、100,000ペソ~200,000ペソ(約20万円~40万円)なら妥当ではないかなと思います。
資本金について
資本金についても業種などにより異なります。
しかし、基本的に判断材料になるのは以下の点だと思います。
・計画しているビジネスの種類
フィリピン会社法上、株式会社に課せられていた会社設立時の資本要件である、授権資本(authorized capital)の最低25%相当の株式を引き受け(subscribed capital)、引受株式の最低25%を払い込む(paid-up capital)という要件は撤廃され(共和国法第11232号、改正フィリピン会社法、2019年2月23日施行)、会社設立に際しての資本要件はなくなった。ただし、増資の場面においては従来の25%の資本要件は依然として課せられている。
外国資本が40%を超える会社については、国内市場向け企業の場合、最低払込資本要件は20万ドル。この会社が先端技術を有するか、50人以上を直接雇用する場合は最低払込資本要件が10万ドル。さらに、銀行など特定事業に従事する株式会社には、当該事業を規制する特別法や施行細則に従い、高額の最低払込資本要件が適用される。主な業種とその最低払込資本金は次のとおり。
ということで、
2019年2月20日の改正会社法で外資規制に該当しない、法人設立については資本要件は無くなったようです。
しかし、資本金を増資する時には、従来のルールが適用されるので、以下で少し解説します。
ザックリと解説なので、ザックリと説明することをご了承下さい。
あと、最初以外は英語で表記します。なぜなら、英語に慣れて欲しいからです。
Authorized Capital Stockは、定款に定める会社の資本金の総額です。
Paid-Up Capitalはそのうち、払い込む、つまり、銀行の残高証明を提出する必要のある金額です。
また、フィリピンは日本とは違い、基本的に1つの会社は1つのビジネスしかできません。
なので、「レストランと不動産とコンサルタントを1つの会社で!」とはいかないのです。
また、先ほど「資本要件は無くなった」とありましたが、実際はそうは言ってもある程度の資本金が必要となるようです。
また、別の記事で書きたいと思っていますが、外国人の労働ビザ(9g)を取得する場合は特に資本金はDOLE(フィリピン労働雇用省)は厳しくチェックします。
私が以前、外国人4人の労働ビザを取得する際にはDOLEから2,000万円以上の資本金増資を求められた経験がありますので、注意が必要です。
私の予想ですが、おそらく政府各機関の連携はまだ十分ではなく、SEC(証券取引委員会)でも担当者によって、条件が変わったりすることがあるので、改正会社法の前の基準で判断している担当者もいるような気がしています。
なので、一応、以前の資本金の目安を少し参考として、以下に記載しておきます。
Authorized Capital Stock(授権資本金)の参考
業種 | フィリピンペソ | 日本円(約) |
レンディング | 1,000,000 | 200万円 |
投資助言業 | 10,000,000 | 2,000万円 |
投資会社 | 50,000,000 | 1億円 |
また、フィリピンで外国人がビジネスをする場合は多くの制限があります。
基本的に外国人株式の保有率を40%以上にする場合は、外資系企業として資本金を増資する必要があります。
フィリピン国内向けのビジネスを行う、外資系企業の場合はUSD200,000(約2,000万円)が資本金として必要となります。
外国人投資ネガティブリスト(FINL)
フィリピンにはFINL(通称ネガティブリスト)が存在します。
これにより、業種によって外国人の出資や役員が禁止されていたり、株式の保有率が制限されている場合があります。
こちらについては、以下のJETROの記事がまとめてくれているので、ご自身の業種がどのような規制を受けているか確認されることをオススメします。
フィリピンのビジネスにはどんなライセンスが必要なの?
フィリピンでビジネスをオペレーションするには、基本的に以下のようなライセンスが必要になります。
まずは、ライセンスのまとめと補足、そのあとにプロセスなどは前述のとおり、ちゃんとしたプロに任せる前提として、注意点などについて書きたいと思います。
ライセンス名(短縮) | ライセンス名 | 日本語訳 |
SEC | SEC Registration Certificate | 定款 |
GIS | General Information Sheet | 登記簿謄本 |
BP | Building Permit | 建物占有許可証 |
BC | Barangay Clearance | バランガイ(最小行政区)許可証 |
MP | Mayer’s Permit | ビジネス許可証 |
FIC | Fire Inspection Certificate | 消防検査証明書 |
SP | Sanitary Permit | 衛生許可証 |
BIR | BIR Registration Certificate | 内国歳入庁納税者番号 |
SSS | Social Security System | 年金基金 |
PhilHealth | Philippine Health Insurance Corporation | 医療保険 |
Pag-IBIG | HDMF(Home Development Mutual Fund) | 住宅ローン基金 |
上記が基本的なライセンスになります。また、日本語訳は必ずしも一致するわけではないので、ご理解下さい。
※Covid-19以降、各省庁への書類提出はオンラインになっていますが、電話が繋がらなかったり、エラーが発生する時がありますので、ご注意下さい。
また、上記以外に業種や都市によって追加で必要なライセンスや申請が必要になりますので、そちらは、設立の際にしっかりと確認をして下さい。
例を挙げるとレンディング法人だと、『コンプライアンスに関する対策規定』などを提出する必要がありますし、場所によっては『CO2排出ガス基準合格証明書』などを提出する必要があります。
また、フィリピンで初めてビジネスをされる方は、銀行口座を持っていないと思うので、資本金を振り込むための口座が必要になります。
なので、TITアカウントという資本金振り込み用口座を大手銀行で開設することになります。
SEC Registration Certificateが取得できたら、法人口座を開設できるので、TITアカウントはクローズすることになります。
法人設立の注意点など
法人設立は平均6ヵ月が目安
私のこれまでの経験ですと、すべてのライセンスが整うまでに6ヵ月は見ておいた方が安全です。
すべてスムーズに行けば、3~4ヵ月ぐらいで全部揃うのではないかと思うのですが、フィリピンの場合、次のライセンスを取るのに、事前に他のライセンスなどが必要になるものがあるので、1つ遅れると、他も遅れます。
また、外国人が役員に入っていると、審査が厳しくなるので、書類が差し戻され、再提出で時間がかかる場合があります。
信用できるフィリピン人がいるなら、最初は役員になってもらった方がスムーズ
もし、信用できるフィリピン人の方がいるなら、役員や株主をその方に任せた方がスムーズではあると思います。
しかし、『信用できるフィリピン人』は、法人設立を依頼した法律事務所の弁護士が協力してくれる場合などに限ります。
日本人の友人の知り合いなどは私は絶対にやめた方がいいと思います。
最初はフィリピン現地法人で設立し、法人設立後に外資系企業に変更する
いきなり外資系企業を設立する場合は時間がかかるので、スモールスタートで現地法人からスタートするのもいいかもしれません。
私の経験では、法人設立が完了してからの変更は難しくありません。
Board of Directors(取締役会)は慎重に
取締役会を誰にするかも重要です。
フィリピンでは基本的に以下の役員が必要です。
役員 | 日本語訳 |
President | 代表取締役社長 |
Corporate Secretary | 企業秘書(書記) |
Treasurer | 会計 |
President
業種によっては外国人がPresidentになれないものがあります。不動産など。
その場合は、Chairman of the Board(会長)などで役員になる方がいいです。
Corporate Secretary
Corporate Secretaryはとても重要です。フィリピンはまだまだ銀行も未成熟で、小切手を良く使う機会があるのですが、Corporate Secretaryは小切手の署名者を変更できますし、役員会議決を作る権限もあるので、ちゃんと信頼できる人でないとあっという間に乗っ取られてしまいます。
また、注意点はCorporate Secretaryはフィリピン人のみしか就任できません。そのため、スタートアップで信用できるフィリピン人がいない場合は、弁護士などに相談しましょう。
ハッキリ言ってフィリピンの個人弁護士レベルは信用できないレベルです。多少コストがかかっても、最初はある程度の規模のしっかりした弁護士事務所を使用した方がいいです。
Treasurer
Treasurerは会計、財務役員です。Treasurerは外国人でも就任することが可能ですが、法律改正があったとはいえ、基本的にフィリピンの在住証明書の提出を求められます。
また、Presidentは同時にTreasurerを兼任することも可能です。しかし、TreasurerとCorporate Secretaryを兼任することはできません。
決定事項は役員会議で議決し、役員会議はオンラインで開催しましょう
フィリピンでは役員会議を執り行う場合、定款に定められた期日に役員会にアナウンスを行う必要があります。
テンプレートだと『開催日の営業日7日前までに正式な通知書で開催日時、場所、議題を通知する』となっていると思います。ただし、緊急の役員会などは『これに限らない』となっていると思います。
基本的にはCorporate Secretaryがすべての役員に7日前に、アナウンスレターを作成し、それをメールで送れば問題ありません。
また、フィリピンではオンラインでの役員会議の開催が認められており、出席者全員の合意を得て、会議を録音することができます。
なので、英語がすべて理解できない方は上記の方法をオススメします。これは、何かあった時に裁判でも使用できる証拠になります。
また、役員会議の委任状による、議決権の委任は法改正で認められなくなりました。
ちゃんと出席して、確認しましょう。
また、Corporate Secretaryが会議終了後に、議事録を提出して役員全員が署名すると効力を持ちますので、ちゃんと確認して間違えていることがあれば修正を提案して下さい。
本当はもっと書きたいことがあるのですが、長くなってしまいましたので、今回はこれで終わりになります。
海外でビジネスをスタートする方は、情熱を持ってフィリピンにこられると思います。
しかし、焦りは禁物です。
私はまだまだ大した経営者ではありませんが、ビジネスをする時には大きな決断をスピーディーに行うことは必要です。
しかし、それは長年の経験と、膨大なデータや法律を理解しているからこそできるものです。
また、私は法律のプロではないので、実際にフィリピンで法人を設立する場合は必ずプロに相談してください。
しかし、私はこれまで色々失敗もしてきたので、私の記事が少しでもこれからビジネスをスタートする皆様の参考になれば幸いです。